がん治療と早期発見

ブログを開いていただきありがとうございます。

患者の集い・モミの木事務局です。

本日は「がん治療と早期発見」ということで、ブログを書いていきたいと思います。

がんは治る病気になりつつある?

科学の進歩は目覚ましく、新薬や新しい診断機器の開発も日進月歩です。当然、がん治療に対する私たちの概念も大きく変わってきました。

40年ほど前には、がんと言われたら、そのまま死刑宣告のようなもので、そのため、患者さんに告知をするかしないかという論争もあったぐらいです。

今では、家族の強い要望がなければ、通常の診察結果の説明の流れの中で、自然に話されるのが普通になってきています。

医療を提供する側には、しっかりしたインフォームド・コンセントが求められているうえ、積極的な治療を行う場合には、患者にがんを告知する必要が生じるからです。

患者サイドから見た場合でも、個人の尊厳を尊重するという社会的コンセンサスが生まれてきたことと、「すでにがんは、不治の病ではない」という認識が一般の人にも浸透してきたからでもあります。

私の子供の頃は、白血病は不治の病とされていました。この病魔に侵された子供の闘病記をドラマにしたものを観て、涙したのを記憶しています。

抗がん剤の発達や新しい分子標的薬の登場などで、今ではこの病から生還する人たちも数多くいます。このように、一部のがんでは、不治が不治ではなくなり、「希望」という言葉に置き換わりました。

しかし、ふたを開けてみると、多くのがんではこのようにうまくいっていないのが現実です。診断技術の進歩や、人間ドック・集団検診の広まりなどで早期発見が可能になり、治療成績が大幅に向上した結果、胃がんでは、なんと、70%近くの治癒率が報告されています。

「これだけ治れば、怖くはない」と勘違いなさる方も多くいるのではと思います。これは、すべて「早期に見つかったがん」や「手術後に再発しなかったケース」だったということです。

問題は残りの30%にあります。抗がん剤も毎年のように新しいものが登場してきます。しかし、かなり進行した状態で見つかったがんは、昔も今も、残念ながら治せないのです。

 

早期発見で生存率は向上

がんの治癒率が向上した大きな原因には、早期発見があります。

いわゆるステージ0、Iが早期のことですが、これは、がんができた部位にとどまり、周辺の臓器への浸潤がなく、所属リンパ節への転移もなく、遠隔転移もないと判断された場合です。

わかりやすく言えば、がんが1カ所だけにとどまった状態で、他にはない場合を言います。

この状態までに発見でき、局所的な手術で除去できれば、ほとんどの場合、高い確率で完治が期待できます。診断も手術も人間の目と経験で判断しているわけですから、ミクロのがん細胞を取り逃がすこともないとは言えませんが、理屈のうえでは、転移がなければ完治できるというわけです。

この段階で発見しようという運動が、早期発見、がん撲滅運動につながっていくわけです。ありがたいことに、診断技術の進歩は加速度的です。胃や腸の内視鏡などの技術も進み、胃がん、食道がん、大腸がんなどは、医師の目視による早期の発見も多くなりました。

CTやMRI、エコー、PETなどによる画像診断の装置も普及し、肺がんや肝臓がんの早期発見にも寄与しています。マンモグラフィーは乳がんの早期発見に大きな武器となりました。ピンクリポン運動に代表されるように、早期発見による乳がん撲滅の社会運動も盛んになっています。

また、血液検査でわかる腫瘍マーカーによって、一部のがんの早期発見も可能になってきています。新しいものでは、胃や小腸を検査するための、カプセル型の飲み薬のようなカメラや、らせん状に撮影し、立体的な画像を形成できるヘリカルCTなども登場してきています。

しかし、どんなに診断技術が進歩しても、診断そのものを受けなければ意味がありません。定期健診の必要性が叫ばれるのはそのためなのです。

 

早期がんは、なぜ無症状なのか?

早期発見には、自主的に検診に出向くことが重要であるということですが、その理由はたった一つです。早期のがんには、自覚症状がないからです。

がんが、痛みを伴い、自覚症状が出るという状態になるにはさまざまな理由がありますが、多くは、腫瘍が神経を圧迫したり、皮膚を引っ張ったりするようになることによります。このような状態で見つかると、すでに進行していることが大半です。よって初期のがんには、症状が出ない、ということがわかっていただけたと思います。

一般的な病気は、症状が出て初めて病院に行くものなのですが、がんに限っては、それでは遅い場合が多いのです。

平林茂著 医者の言いなりにならない「がん患者学」P52~P56より

がんの早期発見の重要性に関しては、すでに世間でも数多く言われており、ご存知の方も多いと思いますが、改めてこの場をお借りして、がんの定期健診の重要性を、みなさまにお伝えできたらと思い、ブログを書かせていただきました。

ちなみに、定期健診の翌日や翌週など、健診の直後にがんができてしまった場合はどうなるのか、ピンポイントで受けないと意味がないのではないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしそれは、がんの発生の仕方を理解できれば、この疑問も解決できます。

がんは、細胞の遺伝子の異常が「長年積み重なって」発生する病気です。細胞が分裂し新しい細胞になる際に、間違った遺伝子情報を新しい細胞が引き継いでしまうからです。間違ってコピーされた情報を修正したり、がん化しそうになった細胞を排除する機構は、人体の中にも存在しますが、それをすり抜けて、少しずつ異常な遺伝子が積み重なっていくのです。

多くのがんの発生には、長い時間がかかるわけですから、定期健診を毎月受ける必要はないことがご理解いただけたかと思います。